Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

うなぎなき未来

シラスウナギの漁獲高のニュース。これはかなりストライキングというか、ショッキングです。

https://news.yahoo.co.jp/pickup/6268189news.yahoo.co.jp

前年比がこれ…って、もう絶滅の一歩手前まで来ていると言えるのではないでしょうか。 その理由は明確です。持続可能なレベルを越えて、過去の僕らが食べすぎたからです。

僕は、2013年の4月から禁鰻、すなわち鰻絶ちをしています。 僕が日常(と言っても、ぼくは一年に一度、食べるかどうかでしたが)で摂取すること自体が、持続可能なレベルを超越していると自覚したためです。そして、安価な取引で持続不可能なレベルの商売を行なう企業には(少なくとも、鰻を通じては)貢献したくないからです。

正直に言うと、鰻がそこまで好きでもないという理由もあります。ほとんどタレの味じゃないですか…?*1

それでも難しい禁鰻

禁鰻を行なってから現在2018年1月までの半分以上の期間を海外で過ごしているため、神戸の自宅へ戻ると、両親はたいそう喜んで、もてなしてくれます。

特に母は、肉や魚などを用意して、振る舞ってくれるわけです。鰻も例外ではない。母としては喜ぶ僕の顔が見たくて鰻を振る舞うわけですが、僕は食べることを拒むので、母をがっかりさせてしまったこともありました。

こうした僕の行為は時として「空気の読めない」行動になることでしょう。

例えば友人たちとの楽しい飲み会。居酒屋で鰻料理を注文しようという話になった時、僕が「NO」と言ったら?*2こうした「思想」が「空気」や「同調」よりもプライオリティの低いものとして見なされているのが、残念ながらいまの日本の状態です(過去にはどんな社会もきっとそうだったと思いますので、すこしずつ改善されていけばよいと思います)。社会適合者であることと、社会の現在の全てを受け入れることとは、等号ではないはずです。

鰻は絶滅するか?その根拠:研究者による著書から

漁獲高は必ずしも、潜在的な個体数に比例しているわけではありませんが、鰻の個体数のよい(あるいは、唯一の)指標と言えると思います。それでも、詳しい現状は、なかなか(僕のような研究者でも)簡単にアクセスできる情報として明らかにされていません。

しかしうなぎの保全生態学についての著書

https://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B01N102RDA

によると、次の点が指摘されています。

http://d.hatena.ne.jp/shorebird/20170710 より引用)

  • 日本で養殖されているウナギの半分以上が密猟・無報告漁獲・密売を経たものである.これらの違法ウナギは正規のウナギに完全に混ざって流通しており,取扱業者も正規・非正規の区別はできない.
  • 現行の漁獲量規制は全くのザル法で漁獲量削減の効果は期待できない.
  • 養殖場において成長の悪いウナギが選択的に河川に放流されている.
  • 消費量の削減のみによってウナギの保全がなされることは期待できない.劣化した成育場の環境回復が必要である.

問題は深刻です。日常的に口に運ばれるウナギの多くが、「闇ルート」を通じて収穫されたものだということです。

あまりにも残念な現状

規制が行われていない現状は深刻ですが、もっと深刻なのは、人類に対して総合的知見を提供するための機関である大学ですら、その現状を認識・重視していないということです。

一部の大学では、生協のメニューで鰻丼を安価(生協なので当たり前)で提供しているのです。水素水を生協で売っている大学も福岡市の西区にありますが…。

ちなみに、リベラルなアメリカ西海岸でも、鰻への危機感が認識されているわけではありません。

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レイク・タホへの道中に立ち寄った、韓国系スーパーにて。値段を見る勇気が出ず。

なぜそもそも守らねばならないか

ここは議論の筋道が間違いなく別れるところですが、 地球生態系というのは現在の人類だけのものではないのです。地球のあらゆる資源は、将来的に持続的な形で利用されるべきです。 「では、なぜ持続させるべきか?」は、我々よりも若い子どもたちの顔を見てから考えてみてほしいです。

「おとうさんやおかあさんがウナギを食べすぎたからね、もうきみたちはウナギを食べられないんだよ」

「へー!愚かだなぁ!」

さらに、ウナギが滅びた場合、ウナギを餌として利用していた動物たちはどうなるでしょうか?あるいは、ウナギが餌としていた生物たちは増えすぎてしまう。 こうした「生態系のバランス」は、いつ地球に計り知れぬ危機をもたらすでしょうか?

人類史には、リョコウバトやドードーなどが人間の手によって滅ぼされてきたという、恥ずべき過去があります。 次はライオン?サイ?ゾウ?トラ?チーター?動物園にいるあんな動物やこんな動物が、実は絶滅の危機に晒されているのです*3

それだけではありません。花を咲かせる植物、樹木、目にも見えぬような微生物、深海の生物たちも絶滅の危機に晒されている可能性があり、持続可能なレベルを保つことができるのは人類だけです。そして絶滅においやることができるのも。

地球上の生命体はすべて、考えられないような時間のかかった進化という歴史の産物です。いわば地球の、かけがえなき財産そのもののはずです。

「食べるな」とは言えない。…けど…

FBやInstagramでもたま〜に目にする、ウナギを釣った写真、食べている写真、もろもろ。 やっぱりちょっと、いやかなり、悲しい気持ちになります。

乱暴な言葉で言えば「貧すれば鰻を食うべからず」なわけですが、鰻を食べるならそれ相応の対価を払ってほしいと感じるのです。*4

よくある返事❓

  • 「絶滅するの?それなら急いで食べなきゃ!」
  • シラスウナギが絶滅したら、他のウナギをとればいい」

僕はこれには、さすがに言葉を失います。

  • 「ウナギで商売をしている人たちはどうなるんだ!」

どの程度、持続可能な取引をしてきたかが問題なのです。もしもその資源が尽きようとしているのであれば、取引を減らすのは当然のことでしょう。

代替案:ナマズはどうだい?

現実的な代替案だと思います。ナマズは形がグロテスク?もしそうなら、ウナギもけっこうグロテスクの分類に入るのではないかなあ。

portal.nifty.com

めっちゃ美味そう。

おまえ、マグロ食べてるやん!

クロマグロもそろそろヤバいはず。安い消費をやめるべきですね。鉄火丼はもう、食べたくないなあ…うまいけどなあ…

果たして僕はこの一生を、ノン・ベジタリアンとして過ごすことができるでしょうか。

子どもたちに鰻を

僕が一匹の鰻をたべることを我慢することで、僕の子どもが少しでも鰻を食べる可能性が高まるのであれば(いや、高まらなくても)僕は喜んで、鰻を絶ち続けます。いつか子どもを持った時、4年に一度くらいは、鰻を食べさせてあげたいなあ(僕は食べないけど)。

*1:僕はサラダにドレッシングはかけないし、マヨネーズも基本的には使わないし、刺し身も醤油なしで食べること多いし、焼肉にはタレなど絶対につけません。炊き肉のタレについては、強い反発すら覚えます。あれ、肉の味を殺しすぎ!

*2:実際のところはこれまで、「気にせず頼んでいいよ、僕は食べないだけ」という対応をします。

*3:とくにサイは、その角に媚薬としての効能があるという迷信によって、個体数がどんどん減っていっているようです。もちろん密猟。知性と教育の重要性を痛感させられます。

*4:繰り返すが、ぼくは正当な価格での取引であったとしても、もう購入しない

海外からのアカデミア就活:日本への遠い道

海外に住んでいても、日本国内の公募を目にすることがあります。

そのだいたいは「簡易書留で書類を提出のこと」。そして「別刷りをX編Y部印刷」。

単純計算のため、一編の論文を10Pだとして、5編10部印刷するとしましょう。両面印刷にして、10×5×10÷2 = 250枚の紙が必要になります。A4一枚はだいたい4gとのことですから*1、250枚×4[g/枚]=1000gの書類に。重いなあ。

これをFedEx Rates and Transit Timesにていくらかかるか計算してみましょう。行き先は例えば、神戸大学としましょう。 Fedex Pakないし、Fedex Envelopで送付してみることにしましょう。詳しくは表示しません。結果はなんと

\[ 100ドル以上 \]

おっと、面接に呼ばれました。Skypeダメ?現地でやらないといけないんですね。えっ!旅費は出ないのですか…?そうですか…自費ですか…。往復1400ドルと見積もりましょう。

…ということは目下、郵便と飛行機で出費は100+1400=1500ドル…今のレートで16万8000円/応募ですか。

気を取り直して、5つほど公募に出してみましょう。16万8000円×5 = 84万円。*2

たとえば海外学振だと、年間525万円が「給与」として頂けます。1年に5つの公募に出すとすると16%以上が応募費に消え得る

おっと、しかも海外学振だと、日本に帰国している間は給与がストップされる…!?ということは、たとえば毎回4日ほど日本に滞在するとなると、20日分の給与が消えることになるので、16%というのは過小評価。*3

往復飛行機代1400は見積もりが高すぎる?いやいや、羽田や成田、関空から移動してホテルに泊まって外食して…となると、どうでしょう?

日本人の僕には出せません

そう。このままでは若手研究者は、海外からは戻ってこれないのです。

もしも現代の科学国策が若手研究者を海外へ送り込み、経験を積ませて帰ってこさせることなのだとしたら、前者はまだしも後者は功を奏しません。

だって帰れませんから。

ぼくが知っている公募の中には、電子メールでの公募を受け付けるものもあります*4。こうした公募がどれだけ有難く、ロールモデルとなることか。煎ずる爪の垢すら取れなさそうな素晴らしさ。

海外の研究者も出せません

だいたい日本以外の公募は電子メールでの応募を受け付けます。いや、たとえばポスドクとなると、事前のSkype面接だけで済ませるところすらあります。 そうなると、わざわざ郵便で100ドル以上かけないと出せない公募に、海外研究者が出しますか?いいえ、出しません。そんなことをする間に、ほかの公募にロウコストでガンガン出します。

オフィス・インタビュー

ここで、アメリカの友人に

  • メール応募不可
  • 論文をプリントアウトして送付のこと

ということを伝えたときの反応をご紹介しましょう。

  • “That's soooo ridiculous”
  • “What for? No emails?”
  • “Are there no printers in Japan?”

ご提案・要望

  • 電子メールでの受付を強く望みます。
  • 論文もPDFで提出させてください。
  • こうした改善は、国内の応募者にも有益かつ、公平です。
  • せめて提出方法を交渉させてください。
  • 「公平に取り扱う」のであれば、海外からの応募で著しく不利・不公平な立場の研究者を他の応募者と公平に扱うことを検討して下さい
  • どうか、若手の苦労を忘れず、会議での提言を行なって下さい。
  • 守るルールの根源的理由が「伝統だから」でしかないのてあれば、そんなルールは撤廃してください。

こうした意見は、若い研究者が発信していかねばなりません。そうすることで、日本の科学の状況を少しずつ改善する動きを見せるしかないのです。

追記

海外のポジションではだいたい、旅費をサポートしてくれる、ということを強調し忘れました。

また、本記事公開後、さまざまなご意見を頂戴しました。

全くもってその通り。履歴書や業績を(大学・研究所独自のスタイルで)提出するよりも、すでに確立されたORCIDという世界のスタンダードかつ画一化されたシステムを利用するのは、良いアイデアだと思いました。そしてそのうえで、さらに必要な情報があれば、追記させればよいと思います。

Couldn't agree more.

鍵アカウントの方からは、「Reference Letterを(当然、別途)郵送させる大学もあった」とのハナシも聞きました。そうか。たしかに応募者が見ることの出来ない情報なんだし、別途郵送ということになるのか。

…え、海外からですか?

ほえ〜!それは知らなかった。でも、残しておきます。間違った記述を行なってしまった場合は、ここで言及してフォローしていきます。

コメント欄より

NIKIさん

遺伝研での公募に関する情報を頂戴しました:

国立遺伝学研究所の人事の教員公募

  • 応募書類はすべて電子メール送付でOK。
  • 論文別刷りはPDF。
  • 略歴書のみ指定の様式, 後の書類は自由形式。
  • 海外からも含め面接への旅費支給あり。
  • 照会者のリストだけで、推薦書の添付は必要なし。

となっています。ぜひ、関係するような公募があれば応募してみてください。

遺伝研、素晴らしいですね…。遺伝研には、海外からのポスドクがいるという話も聞くのは、こういうことでしたか。これぞ国際化。

vtpさん

今はjrec-inで、募集機関側がweb公募も選べます。それすらも、使っている機関を殆ど見ません。私は公募を、それこそweb公募でやってほしいと提案しました。事務は、前向きな反応でした。権限がある方々にも話し、反論もありませんでした。しかし、実際にやる段になると、そもそもそんな提案などなかったのごとく、今までやってなかった事はやらないという顛末でした。日本で地位が高くなった多く方々は、肩書が上の方々への忖度は非常に上手ですし、自分の評価に関連しそうな事には周りを犠牲にしても非常に敏感に対応します。しかし、彼らには、下々の苦労を解消するために、例え上からの評価基準に入ってなくても、新しい事(web公募も新しくも無いわけですが)をやってやろうという意欲が必要とされてこなかったんだと思います。

補足としてJREC-INとは、日本の仕事の広告を載せるポータルサイトのようなものです。そこにweb公募項目があったとは…。これがあれば直ちに状況を大幅に改善できると思います。

HMさん

素晴らしいですね。 現在、海外在住で日本国内のいくつかの公募にアプライしていますが、個人的に問い合わせしてみると、「メールでも大丈夫です」と回答していただける場合もあるようです。今のところ、「メール不可」というのはないので、公募主に事前に問い合わせてみるのも良いかもしれません。あと、公募されてても、いわゆる「出来レース」となっている場合もあるので、公募期間が極端に短いのは疑ってもいいかもしれません。公募なのに「公平」ではないのはどうかと思いますが、まあ日本ではいまだにそんなもんだとは思いますが。

やはり事前に問い合わせる、というご意見が多いようです。ぜひそうしたいと思います。

Sallyさん

改行に伴う改変が少し有りますが:

すぐ記録が出てくるのでも、

岡山大学グローバル・パートナーズ講師(特任)の公募(国際担当)

https://jrecin.jst.go.jp/seek/SeekJorDetail?fn=3&id=D118010012&ln_jor=0 (海外在住でやむを得ない場合)、

東京大学大学院理学系研究科 物理学専攻 研究員公募

https://www.shikoku-u.ac.jp/docs/koubo20171012_jidou.pdf

高知工科大学数学公募

https://www.kochi-tech.ac.jp/disclosure/img/mathematics20171206_1.pdf

東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構

http://www.ipmu.jp/job-opportunities

首都大学東京都市教養学部理工学系生命科学コース助教

https://www.houjin-tmu.ac.jp/extra/download.html?d=assets/files/download/recruitment/teacher/tmu/2632_260930.pdf

で電子応募がありました。制度の制約ではないのです。若手研究者の苦労に甘え過ぎだと思います。結果的に、余計な時間を多数の若手研究者に使わせて、昨今の、日本の研究情勢の衰退の一因になっていると思います。

ありがたい情報。結構ありますね。こうした改善がどんどん進んでほしいなあ。

追記2:愚痴ではない。

建設的にものごとを進め、改善に繋げられればいいなあと思います。

追記3:感謝

そのうえで、電子化を進めたり交渉などに柔軟に応じてくださる事務・大学教員の方々には、頭が上がりません。ありがとうございます。

*1:https://www.ddc.co.jp/mail/archives/20090323/110200.html

*2:タイミングがうまくあえば、面接を一度にこなすこともできるでしょうが、ここでは最悪のシナリオを想定

*3:追記参照。

*4:僕の分野で、僕が把握した限りだと、九大と理研の公募は電子メールでの提出でした

アメリカ英語へのカルチャー・ショック

アメリカに来て一年が経ちました。当初は速くて全く聞き取れなかった友人Aの英語も70%は理解できるようになったり、そうでない友人もいたり。

これは、「1対1の英語」と、「王道的な英語」の複雑な相互作用に依存するとは思うのですが、一緒に話す時間の長い友人の英語は、やはり聞き取りやすくなります。 早い話が、慣れてきます。

それでも痛感させられるのは、ぼくがこれまで学んできた英語がいかにアメリカ英語と異なるかということです。フランス人の英語は僕は、(単語が分からない場合を除けば)ほぼ完全に理解できる自信があります。また、愛するモンペリエに関するおしゃべりでも盛り上がります。じもトーク

しかしアメリカ英語は、いまでも苦労しっぱなしです。日々の学びを積分していくことでしか上達しません。話題もポリティカルなことだったり、アメリカ土着のネタだったり。ミュージシャンの話とか。

これを読まれる方の多くはアメリカ英語に馴染みがあるでしょうから些か驚かれるかも知れませんが、今回は、アメリカに来て初めて学んだり使ったりした表現を紹介します。

僕はこちらに来て友達に「フランス語訛り」と言われたことがあります。褒めてる?褒めてない?わからない。

  • Pardon?

フランス語ではよく使うのですけど、スイスやフランスでは英語では使ったことも聴いたこともありませんでした。どちらかといえば“sorry?”のほうがよく使われていましたし、僕は今でもそう言います。

  • For here / To go

喫茶店やレストラン、ファストフードのレジで注文した時の言葉。イートインかテイクアウトかということです。フランスやスイスでは持ち帰ることが多くて、emporte!といつも言っていました。

  • Here you go!

ほらね、ホラァ、とか、どうぞ!くらいのニュアンスでしょう。これを聴いた時はマリオを思い出しました。フランス語ではVoilà。

  • Have a nice one

半年くらい、意味を勘違いしていたのですが、Have a nice day/eveningくらいの意味だったのですね。スーパーに来てレジでよく言われるので、「買ったものを楽しんでね」という意味かと思っていました。ちなみにフランス語ではBon journée。

  • I'm gonna get a XX.

メニューを言う時に、XXをください、と言う時の表現。友達が言っているのを聴いてから、真似しています。でも喫茶店とかだと、coffee to go please、などと言ったほうが手っ取り早いこともあります。ぼくはCould I have XX?と言う癖があります。フランス語ではみんな大好きJe vousdrais/veux XX s'il vous plâit。

  • Would you mind XX?

これはここに書くのも恥ずかしい。きっとフランスでもスイスでも言われていたことがあると思いますが、記憶にない。〜してもらってもよいですか?ということ。もちろん中学で学びます。忘れてたわけでもないです。

  • I'm down!

「今夜飲む人?」などの提案・お誘いに対する返答。行くってことです。フランスやスイスではI'm in、あるいはそれよりもI'll be thereのほうがよく聞いたかな。

  • house

は?

と思われるかも知れませんが、ぼくはplaceという言葉のほうが馴染みがあります。Would you be interested in dancing at my place?といった感じ。houseって言うんや!と思った記憶があります。ここまででそろそろ、こいつアホやと思われてそう。

  • Oh yeah?

多分これはカナダ英語。「そうなの?」くらいの意味。僕もよく使います。Really?だと疑うニュアンスになるからでしょうが、Really⤵︎?と下げて言えば同じ意味になると思います。Ah oui?

  • Folks

音の可愛い単語です。仲間、友達、来てくれる人たち、参加者、といった、チームの仲間を指す言葉です。僕はguysとか言うくせがあるけど、男を指すニュアンスがちょいと出るのかな。

  • Football

言うまでもないですね。サッカーはsoccer、フットボールがfootball。Futbolがフランス語。

ワイファイ。フランスやスイスではウィフィと言っていたので、このへんでも「フランス語訛り」と言われる所以があるようです。

学術論文・プレゼンでのフォント特集1:英文原稿 本文 編

書道が好きなこともあり、フォントが大好きです。そんな僕にとって、論文を書いたり、プレゼンの資料を作るのは、ちょっとした幸せな時間でもあります。

「フォント」と一括りに言っても様々なものがあるので、今回は、

  • 学術論文などの、原稿(本文、図)
  • プレゼンなどの、発表資料(見出し、本文)

を作成するにあたって有用なフォントをご紹介します。その基礎的な部分に関しては、伝わるデザイン が日本で一番わかりやすいです。

これから、

  • 英文原稿 本文
  • 英文原稿 図
  • 英文発表資料

について紹介します(和文については、今後、気が向けば…)。まずは英文原稿の本文編。

僕のシステム(Mac OS X Sierra)にてイタリック非対応のフォントについては紹介しません(使用機会が限られるであろうから)。

例文は、ドラマFriendsのスクリプト

Hey, Emma, you better appreciate this while it lasts because when you get older, you're not gonna be able to just sit around all day

を、websiteから引用しました。また、タイプセットには、Mac OSXのPagesとKeynoteというアプリを用いました。あるいは、LaTeXを用いて出力しました。

すこしでも、研究やプレゼンにお役に立てば幸いです。

前提1:SerifフォントとSans Serifフォントとは何?

Serifとは、ヒゲ飾りのようなもので、Serifフォントとは、アルファベットの文字の端っこに、(書道でいう)トメ・ハライ・ハネ等があるものを言います。*1

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代表的なSerifフォントには

  • Times
  • Utopia
  • Libertine
  • Crimson
  • Palatino
  • Calisto MT
  • Cambria
  • Century / Century Schoolbook
  • Charter
  • Frutiger Serif (有償)
  • Garamond
  • Minion Pro(有償)

などの系統*2が挙げられます。日本語では明朝体(みんちょうたい)に対応するものです。

一方、Sans Serifは、そうしたヒゲ飾りのないフォントのことを言います。Sansとは、フランス語で「無い」という意味です。Serifが無いフォント、ということですね。

枚挙にいとまがないのですが、系統としては

などが利用可能です。和文では、ゴシック体に対応します。

前提2:和文フォントは用いない

明朝のアルファベットなどは利用してはなりません。詳しくは述べませんが、イタリックにも対応していないし、海外の研究者にとっては「未知の」フォントだし、何より長文になると読みづらい。和文では美しいヒラギノ明朝なども、英文では用いるの、ダメゼッタイ。

英文原稿の本文にはSerif体を用いるべし

僕が把握している限り、かなりの割合の学術論文は、Serif体を利用して書かれています。学術論文というのは、著者の多くが研究者であり、読者の多くもまた研究者であるので、きっと研究者コミュニティの間では少なくとも、読みやすいフォントであると考えられているのでしょう。これはきっと、長い文章になると、セリフ体のほうが単語の切れ目が視覚的に認識が容易であることに起因するのではないかと考えられます。以下を比較してみましょう。

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上のほうが読みやすいと感じる人が多いのではないかと予想しますが、どうでしょう?ちなみに、Helvetivaで11ptにしたのは、12ptにするとすこし大きすぎるためです。

以下に、いくつかタイプセット例をご紹介します。フォントサイズはすべて11ポイント。★印は、有償。

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詳しい解説

泣く泣く5つに絞って、推奨フォントをご紹介します。それぞれのフォントの歴史については、

などを御覧ください。

Times New Roman

Timesの後継者です。違いはイタリックにおいて顕著です。

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なお、LaTeXではよりモダンな、stixフォントが利用可能です。TeXLiveにも入っているので、Overleafなどでもローカルでも、用いるには、\usepackage{stix}でok。美しい。11か12pt推奨。

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Times New Romanはたくさんのジャーナルで利用されています。Evolutionや、British Ecological Society系のジャーナル、そしてEcology、Ecology Letters、Physical Review系もそうですね。

Palatino

由緒正しきPalatinoフォント。これを用いておけば、「可読性が低い」と思われる可能性はほぼゼロだと思います。すこし文字が大きめなのと、行間が狭く感じられるかもしれないので、微調整が必要。10pt推奨。和文にもフィットします。

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LaTeXでは\usepackage[T1]{fontenc}\usepackage{newpxtext,newpxmath}でok。Royal Society系のフォントは、最近になって、Plantin Stdというフォントから、Palatinoに変更されました。

Charter

すこし癖が強いフォントなのですが、遠目からの可読性は群を抜いています*5

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LaTeXでは\usepackage[charter]{mathdesign}\usepackage[T1]{fontenc}でok。ただ、ρや∂などが少しだけブチャイクなのが欠点。ジャーナルのGeneticsなどではこのフォントが利用されています。

PT Serif

あまり知られていないかもしれませんが、Googleの提供する素晴らしいフォント。僕も履歴書はこれで書いています。

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LaTeXでは\usepackage{paratype}\usepackage[T1]{fontenc}\usepackage{PTSerif}でok。残念ながら数学フォントは提供されていないので、僕は

\usepackage[charter]{mathdesign}\usepackage{paratype}\usepackage[T1]{fontenc}\usepackage{PTSerif}

として、先述のcharterを数学用のフォントにとして置換利用しています。

Calisto MT

Microsoft Officeにはおそらく標準的に備わっているはず。癖の強いフォントながら、イタリックにも対応しているは、遠目に見ても読みやすいはで、最も推奨したいフォントのひとつです。欠点は、LaTeXで利用不可能なこと。

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余談1:Googleさんあざっす

GoogleのSerifフォントは実に素晴らしいものが多いので、例をお見せします。くわしくはググってください。

Googleサンセリフ・フォントも実に素晴らしいです。それについては今後。

余談2:Linux Biolinum

サンセリフのようで、セリフ。セリフのようで、サンセリフ。不思議なフォントで、新しいカテゴリを作り上げたのではないかと思えるほどの見栄えです。標準には備わっていないので、ダウンロードが別途必要です。

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履歴書に用いる人も散見されますね。LaTeXでは

\usepackage[sfdefault,mono=false]{libertine}\usepackage[T1]{fontenc}

でok。エルなどが特徴的ですね。Oikosのタイトルなどはこれ。

余談3:ジャーナルにおけるフォント

  • 一部の学術論文では、いまだにGaramond、Baskervilleが利用されています。数式が使われる場合には、読みにくいったらありゃしない。
  • Nature系は一律、Minion Proが用いられています(残念ながら有償)。
  • Trends in Ecology and Evolutionは最近まで、Century Schoolbookが用いられていて、大変ふとく読みやすいフォントだったのに、最近になって、Helvetica(系)になってしまいました。改悪。
  • Plantin StdやWarnock Pro、Frutiger Serifも太く美しいフォントですが、有償。

まとめ

以上、ぼくの主観で、5種類の標準的なフォントを選抜して紹介しました。他にも普段から使用するフォントもあるにはあるのですが、まずはこれら5つを原稿に用いて比べてみて、好きなものを利用されるとよいと思います。

*1:https://bulan.co/swings/roman_basic-knowledge_history/ の解説が素晴らしい。

*2:系統、というのはつまり、フォントの開発に伴う後継のフォントがあるということ。フォントは進化するのである。

*3:ただしOptimaやBiolonumは、サンセリフとセリフの中間的な特徴を有していて、セリフが少しある、モダンなフォントです。

*4:No more Tofuの略

*5:Lucida BrightやFrutiger Serifなどもそうだと思う

*6:Notoは、Noto Serifはもちろん、Noto Sansが凄まじく読みやすい。

LaTeXのワードカウントにはSublimeプラグインを使おう

Sublime Textというテキスト・エディタがあります。ファイル形式(そして言語)に従って、様々なカラーでのハイライトを行なってくれるエディタです。

Sublime Text 2 - Sublime Text

.texを含め、だいたいのプログラム言語のファイルを開いて、快適に編集することが可能です。

さて、最近になって、Sublime TextではLaTeX コンパイルのためのPlugin(拡張機能)が利用可能で、その立ち上げは非常に簡単であることを学びました*1

Windows:

SublimeText3でUTF-8のLaTeX環境を構築する(Windows) - Qiita

Mac:

SublimeText3でUTF-8のLaTeX環境を構築する(Mac) - Qiita

その方法については、上のQiita参照で。

そのような、「Sublime TextでLaTeXコンパイル」を(面白半分な気持ちで)利用し始めたのがつい先週のことなのですが、驚くべきPluginを発見したので、それもついでにインストールしました:

GitHub - SublimeText/LaTeXTools: LaTeX plugin for Sublime Text 2 and 3

なんと、どうやらWord Countできてしまうらしいです。Microsoft Wordでは簡単に可能なword countでも、LaTeXではそれなりに労苦があるのです。

早速、試してみました。

スピード:一瞬!

従来は、TeXCountというPerlスクリプトが利用可能でした*2し、web interfaceでも行なうことができました*3。 しかし、ファイルをアップロードしたりPerlスクリプトを(ターミナルから)打ち込んだりする労苦に変わりはありませんでした。

しかしこのSublime Textプラグインでは、一瞬。例文では、

The quick brown fox jumped over the lazy dogs

を用いることにしましょう。

まず、Command(WindowsではCtrl) + Shift + Pで、プラグインを利用するためのパレットを呼び起こします:

f:id:lambtani:20171218090714p:plain

つぎに、現れるWord Countをクリック。すると:

f:id:lambtani:20171218090946p:plain

これより

  • 単語数は9
  • 空白スペースを除いたキャラクターの数(日本語で言う文字数)は37
  • 空白スペースを含んだキャラクターの数は45
  • スクリプト上の)行数は45

ということが分かります。

試しにMicrosoft Wordでも確認。

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当然ながら一致しますね(単語数9)。

Wordでのカウントの仕方との違い

どの程度まで、精度は保たれるのでしょうか。次の例文を利用してみましょう。

Joey: All right, all right, let's play one more time, ok? And remember, if I win, you do not move to Paris.

これは何を隠そう、ぼくの大好きな"Friends"というドラマの一幕。まずはSublime Textでカウントすると:

f:id:lambtani:20171218091858p:plain

単語数は23らしい。

MS Wordでカウントしてみました。すると:

f:id:lambtani:20171218092112p:plain

おや、22?この違いやいかに?

アポストロフィ

犯人の正体は、let'sのlet usを1とカウントするか2とカウントするかの違い。どうやら、Sublime Textでは、短縮形をセパレートしてカウントしてくれるみたいです。なるほど。たとえばo'clock(=of clock)やO'brien(=of Brien)は、ともに単語数2とカウントされるようです。

ただ、論文では普通は省略形は(人名以外)用いないので、問題なさそうですね。

引用文献や定義されたコマンドでのテキスト入力はカウントしない

ただ、このSublime Textカウントの欠点は、コンパイルしてPDFに現れる単語数をカウントすることはできないということ。たとえば、\usepackage{lipsum}をもちいて本文で\lipsumを命令したときのラテン語たちをカウントすることはできないし、引用文献に現れる単語たちをカウントすることもできない。そして、今のところ\caption{}や\footnote{}内の単語をカウントすることもできなさそう。

欠点こそあれど

TeXCount.plは有用なperlスクリプトですが、コンパイルしながらカウントできるという、閉じたシステムを利用するうえで、Sublime Textを利用するのは良いのではないでしょうか。

*1:とはいえもちろん、TeXLiveなどを事前に利用できる環境が確立されていたほうがよいと思います

*2:http://app.uio.no/ifi/texcount/

*3:http://app.uio.no/ifi/texcount/online.php

国際学会で僕が心がけていること

国際的な学会でいかに自身の研究を面白く伝え、顔を覚えてもらえるか、というのは、アメリカやヨーロッパでは特に重視されていることのように思います。それをどのように活かすか。僕の直近の経験談から探ってみたいと思います。

まずは経験談から

とても評判の良い学会(EEID)にラボの皆んなで行くことになっていて、講演登録を済ませたのが、3月の下旬。日本で二つの講演依頼をうけ、アメリカに戻ってきた次の日。なぜか食中毒に倒れてフラフラでした。

そして無事に登録が受理され、めでたく口頭発表できることになったのはいいけど、なんとパラレルセッションがないとのこと…

つまり参加者全員が一斉に会場にやってくる。 ラボのみんなはポスター発表で気楽。

僕一人が口頭発表。

オフィスでの背後の友人に「パラレルセッションがないとか知らんかった!怖い!(It’s scary!)」と言うと

「That’s why I didn’t apply to the talk session ;)」

意訳:「せやから私は口頭発表には応募せんかったんや」

おーーーーーい!

さあ、ナーバスもいいところです。

  1. 聴衆はネイティブ、僕は非ネイティブ。
  2. 聴衆は非理論家、ぼくは理論家。
  3. ぼくは非疫学者、聴衆は疫学者。

ということで、極力は数式を使わず、喋らなくても分かるレベルのビジュアル性で、ただただ聴衆に理解を訴えかけることに。

いわば顔芸

  • 6/17: 準備開始。

  • 6/20, 15h00: ラボのみんなのまえで練習。そこで一時間半ほど、みっちりコメントを貰う。そこでの評判は、なかなかでした。

  • 6/23, 16h00: ボスと1:1で練習の時間を割いてもらい、一時間半ほど練習。良いコメントをもらったので、大幅に変更。

  • 6/24, 10h00: ラボの皆と車でサンタ・バーバラまでドライブ。郵便局に寄り道しつつ、合計六時間。

寝て・食って・寝てるだけ*1でしたけど、Moss Landing Harborの野生のラッコが印象的でした。

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  • 6/24, 18h00: 会場到着。ウェルカムパーティに行ったり、すこし友人と電話したり、すきをみてスライドを改訂。

  • 6/25, 9h00: 学会がオープン。アットホームな雰囲気。ただし聴衆は300人以上いそう。僕はと言うと、練習は合計10回はしたはずやけど、本番までナーバスな状態が続きそう。

  • 6/26, 9h00: 学会公式のハイキング。海鳥の保護区域の外をハイキング。友人と迷子。10kmほど歩いたのち、別の友人夫妻と合流して、昼飯。

  • 6/26, 15h50: 僕の本番。アガりまくり。

しかし、リラックスできるように話しかけてくれた座長や、そのナイスなイントロもあり、あっという間の17分半のトーク。制限時間は質疑応答を含めて20分やから、我ながら完璧に近い時間配分。

かなり凝ったスライドを作ったこともあり、多くの笑をさらった。そのおかげで、終わる頃には肩の力もどんどん抜けていました。

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  • 質疑。日本語ですら苦手やのに。1人目の質問者の質問が、(僕が取り組んだトピックをAとすると)「Aは起こると思う?」というもの。質問者はいわゆるビッグネームの研究者。そこで僕はただひとこと、

“YES”

  • これで会場は大きな笑いに包まれた。友人たちはその後、その質問者の「悪意」についてプリプリしていたが、ぼくの回答もちょっとsnobbishだったので、おあいこ。

  • あとは、友人知人からの質問に答えて終了。鋭い質問だった。

  • 発表後は友人たちが心の底からトークを讃えてくれて、もう完全に僕の脳みそは「はよビール飲みたいモード」。

  • 僕はカナダで働く可能性もあったが、その可能性についてずっと検討して議論してくれていた受け入れ研究者(発表中に質問もしてくれた方)たちとバーへ赴き、そこでおしゃべり。最後に会ったのはローザンヌでのESEBなので、二年ぶりといったところ。

  • というか彼は、僕が発表すると知り、別の学会(@ポートランド)を途中で抜け出して、サンタバーバラに来てくれたらしい…!!!

  • バーには5人ほどで行ったけど、そこで話してた相手が、実は憧れの研究者たち(と途中で判明)。ここぞと、別の研究もしっかりアピールしておいた(寄生者による宿主操作の数理モデル、アリの巣の免疫の数理モデルなどなど)。

  • その後は、バーから懇親会、懇親会からまたバー、そしてバーから海での飲み会へ。海では焚き火を囲んで酒を飲む。その間、何度「I like your/Great/Lovely/Fantastic talk!」と言われたか、文字通り分からない。*2

  • 極めつけは、学会に来れなかったボスからのメール:

I don’t have to ask how your talk went. I’ve heard great things from lots of my friends and senior colleagues! Well done.

  • このうえなく、救われた思いに浸る。

  • 来週は学会で少しおしゃべりした研究者と、本格的にSkypeでチャットをすることに(lovely chatting with youって、素敵な表現のメールをもらった)。

何が大事やねん?

このままやと僕のただの自慢話、で終わりやけど、国際学会で強く心がけていることを簡単にまとめておきます。

発表前:練習・練習・練習。
  • 練習する。

  • そのうえでここは意見が割れるだろうけど、原稿は作らない。

  • 作ってもいいけど、読まない*3

  • というか、覚えるまでやるから、原稿は結局無駄になる。*4

  • 外国語の場合、せめてアクセントくらいは事前に確認しておく。大事なのは美しい発音ではない。アクセントがほぼすべて。ちなみに僕の英語はネイティブ的には、ややフレンチ・アクセントらしい(矯正中)。*5

発表前:発表を広告する
  • 当たり前だけど、自己紹介して、笑顔で、どこにいて、何をしていて、というのをお互いに交換しあう。

  • 「発表するの?」といった質問をして、お互いに口約束でもしておく。

発表中:聴衆のことだけ見つめる
  • これは普段の日常会話でもそう。
  • グループで話すなら全員の顔をくまなく眺め、見渡しながら話す。
  • スクリーンのほうしか見ないのは練習不足。
  • ぼくは、ポインタを使わないと理解してもらえないスライドは避けるようにしている。
発表中:ジョークに挑戦する
  • 趣味問題だけど、笑ってくれたほうが楽しいから。
  • すべることができるのは、すべる勇気がある者だけである。

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  • 注:In vino veritas = 「ワインの中に真実がある」…つまりお酒を飲めば本音が出てくる。ここでは、「発表中には、完全に正確な言葉遣いをしてはいないけど…」という語り口からRead 1909を引用し、最後に「懇親会(Banquet)で話そう」と表示。ここでの笑いが一番大きかった。
発表後:質問者に詰問する
  • 質問してくれた人も、完全に理解したうえで質問できるわけではない。
  • むしろ、どこまで理解や同意が得られているかを知るために、発表後にはこちらから話しかけると有効。
  • その後、「あとでメールするよ!」「原稿にコメントをもらってもいいですか?」などで、交流を深める。
発表後:懇親する
  • まあ硬い話も半分くらいにして、雑談するのも楽しい。
  • 多様な背景をもつ人たちが集まってきているはずだから、色々な話が聞ける。
  • お酒が飲めなくても大丈夫。
帰宅後:メールする
  • 僕は学会後は何人にメールを送ったか分からない。
  • 相手とどういう文脈で何を話したかをクリアにしながらメールすると、より仲良くなれる(し自分の脳みそに刻まれる)。
  • 共同研究の可能性を探る。
  • 二年前の学会で知り合った研究者(カナダのひと)とメールをして、ポスドクとして働く可能性にまで踏み込んだ(かなりポジティブな答えをもらっていた)。縁がとても大事。

こうしたことをMMEE2015(進化生態学数理モデル学会)、ESEB2015(ヨーロッパ進化学会)、EEID2017(進化生態疫学)でも心がけた。これは発表どころか、学会そのものを楽しむためのキモでもある気がする。

ちなみに、僕は怠け者なので、日本ではここまではしない。既に知人が多いからというのもある。そしてたぶん、そこまでマメでもないのだと思う。後記:すみません修士の頃には、していました

僕は英語も友達付き合いも得意でないけど、まずは友好関係を築きたい。そのための手段なんて、今御時世いくらでもあるのだから、活かさない手はない。マイナススタートなら、他の人のアベレージよりもがんばることで、ゼロに戻してようやく対等になれる。

そして最も大事なのは…

ずっと:笑顔でいること、楽しむこと、楽しむための努力をすること

*1:ラッコではなく、車中の僕の話

*2:なぜならば完全に酔っ払ったからだ

*3:無機質に読みあげるくらいなら、事前に録音したものを流したほうが良いとすら僕は思っている

*4:一部の方はご存知だろうけど、このまさに理由によって、僕は急遽発表を依頼されたりして発表すると、クソのような出来になる。急に引き受けるもんではない。。。

*5:僕は練習中の自分の声を録音しあとでそれを聞くという、地獄のような苦行をすることもある。自分の声というだけで気持ち悪いのに、その英語を聞くともう、「ああもっと頑張らなあかんな」という気持ちになる。ドMである。

論文内で「新奇性」をゴリ押しするのはちょっと、お下品

Novel Insights into Priority Claims:Cell Reporter

http://www.cell.com/crosstalk/novel-insights-into-priority-claims

何かと話題になっているこの問題。以前にも、編集長が新奇性を判断してエディターリジェクトするのが良くないという記事

lambtani.hatenablog.jp

を書きましたが、今回もそれに関連して。新規性をゴリ押しするのは下品だと思うし、すくなくともCell誌ではどのように捉えられるか。 すこし長いので要点をマトメます*1。ここでは新規性のゴリ押しを"Priority claims"と呼びます。

Priority claims can be unexpectedly false

「新しさ」は、レビュアーや著者らが見落としているだけ、という可能性がある。もしそうなら、既に発見した科学者に対する不敬にほかならない。

Novelty alone is no indication of an interesting advance

新しいからって面白い革新とは限らない。

Conversely, an interesting advance may not be “novel”

逆に、面白い革新が「新規」とも限らない。だって、「同じ発見だけど、別のアプローチで取り組みました」ということもあるでしょ。

Excessive priority claims can look like an attempt to inflate the importance of the work

過度に新規性を強調するのは、研究の重要性を誇張しているかのように見える。

なお、個人的な印象として、「新しい!」ってのを猛プッシュする論文は、不勉強・不精通に概ね基因しているような気がします。それを全世界に発信してどうする?!そしてだいたいは、下品で不格好。やめましょうね。

*1:当該のブログ内では具体例が挙げられていてなかなかに手厳しい