Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

「笑い」の理念追究

「我々はなぜ・なにに笑うのか?」というのは、我々人間の特徴を知る有力なヒントになるかもしれません。今回は、「笑い」の中でも特に、「優越の笑い」について分析したいと思います。 笑いは大事! 笑いの技術 笑いの哲学 自虐的笑いの難しさ 優越の笑いの…

Oxfordで学位審査してきた

10/7-13の間、Oxford大学に行き、学位審査の外部委員として仕事をしてきました。初めてのOxford、初めての審査ということで、少し緊張しながら渡航したのですが、かえがたい経験をしました。日記を兼ねて綴っていた内容なので長いですが、ひょっとしたら参考…

任期付きポジションの是非

きっとこれからも永遠に俎上に載るであろうこのトピック。 色々な意見があるとは思いますが、(ただいま任期付きポジションにある)私個人の考えを書きます。 まず、「任期付きポジションの完全撤廃」は良くないと思います。任期付きには任期付きの良さも無…

理論生態学:発表・学習・研究の道標

▶1. 講義 1.0 実は:どんな講義もとって良い 1.1 自主学習:予習の活用 1.2 講師の活用 ▶2. 演習形式の講義・自主ゼミ・輪読 2.1 準備 2.2 発表 ▶3. 自主学習 3.1 教科書をいかにして選ぶか 3.2 教科書を読むには ▶4. 研究を行なうにあたって 4.0 数学の学び…

社会で自律した研究者

研究が研究者の仕事であるということは間違いない。 しかし、研究者というのは、壮大な科学分野の中の一個の人間であり、コミュニティの中の一つの点である。つまり社会との交わりなくして、あるいは他の研究者の存在なくして、成立しない、常に相対化された…

なぜ関係なさそうな数学を学ぶと良いか

私は数学が大好きなので、数学を勉強する習慣がありました。免許合宿では待ち時間に『解析演習』で解析演習問題に取り組み、友人との海外旅行には『多様体の基礎』、遊びに行くにもアルバイトに行くにも、先々に数学書を懐に忍ばせていました。 ただ、数学は…

共同研究の始まり

他大学でセミナー講演したときに「共同研究ってどういうふうに声がかかるんですか?」みたいな質問がきて「僕の場合は懇親会などで意気投合した人が一番多かった」と回答したらキョトンとされたことがあったな。共同研究って業績が相手なのではなく人が相手…

僕は論文が書けない

この記事は、数理生物学会ニュースレター(2021年10月)に掲載された内容を、いくつかのタイポを修正した上で、掲載したものです。 ■序言 光栄なことに、日本数理生物学会から、「研究奨励賞」を授かった。その奨励賞に寄せる本稿は、研究内容を整理したり将…

研究テーマとその広がり

私は大学院に入った頃から、移動分散の進化を研究するのだと決めていたし、実際にそうした。血縁淘汰により、血縁者同士の競争が回避されるというのが、アイデアとして根本的に面白かった。 昆虫が好きだったし、まずは動物を主な対象としていた。生物学的に…

下着を持たずにアメリカへ

2019年の夏のことである。国際学会での発表のためにプリンストンに飛んだ。非常に美しいキャンパスや、アインシュタインが住んでいた家(何の変哲もない家だった。下図)を見て回ったり、プリンストンの学生街を楽しんでいた。 大学近くのホテルにチェックイ…

メーリングリストでの“迷惑”なメール

私が登録しているメーリングリスト(ML)において最近、ある人物が、疫学モデルに基づく感染者予測が(氏いわく)破綻したことをあげつらう内容や、果には反ワクチン内容を投稿し始めてしまいました。科学者ならこれらの医療(システム?)を疑うべきだ、と…

単著論文のすすめ

論文を仲間と協力して書くのは、最も楽しい活動だと僕は思います。構造やら図の作り方やら結果の見せ方、議論の仕方をあーだこーだと議論しつつ、ウェブの投稿システムに論文を投稿したり、カバーレターやリプライをどうくみ立てるか、その苦楽を文字通り共…

研究に集中するための工夫

研究の時間の創り出し方 長年、いろいろと工夫をしながら研究に集中する時間を設けてきたけど、以下のエントリーでは、大事なことが明文化されていた: penguinist-efendi.hatenablog.com 研究をする時間は限られる。特に、学生の頃のように自由に一日中研究…

国外での研究生活

私は修士の頃、博士を取るまでに十報は論文を書くぞ!と息巻いていました。しかしいざ研究を始めると、新たに何か結果が導かれたり進んだりすることの方が稀で、何も生まれない日の方が大部分でした。 意欲こそ枯れぬものの、自信が日に日に衰退していきまし…

YouTubeとの距離

先日、携帯電話のキャリア変更のために、ショップへ足を運んだときのことである。行政から義務付けられている、消費者の契約内容の確認等の説明の説明(書き間違いではない)が、動画でなされると知り、感心した。スタッフはその間に別の作業をできるし、法…

研究の三つのタネ

私は研究者なので、さまざまな研究分野の方々と触れ合う機会があるのですが、その能力の高さには舌を巻くことばかりです。それと同時に、どの方も個性がとても強くて、それを社会が評価する必要性も感じます。 控えめに言って、たとえば論理的思考・データ解…

簡単な無限、難しい無限

昔は無限操作が難しかった。大学の無限操作は、濃度や順序も関わる深遠さや、そこらじゅうに落とし穴がある*1ので、尚更である。 研究者として使う数理モデルに現れる数学は、抽象的でなくなったし、決定論的なモデルを扱うことが多くなった。個体数は無限で…

人格と議論の非可分性

白熱した議論になると、ついつい言い合いのようになってしまうことがあります。*1その結果、落ち込んだ気持ちになることが、科学者の世界では悲しいかな、ままあると思います。 僕は誰にもそんな思いはして欲しくないし、できれば言い合いではなく話し合いで…

オンライン学会発表での確認事項

■初めての本格オンライン学会 生態学会で自由集会企画および口頭発表を行なった。5日間という長丁場、大会運営実行委員の皆様には心より御礼申し上げる。 ■学び 実際にオンラインで発表や企画をしてみると、思ったよりも楽しいし、思ったよりも大変だし、思…

数学と写経

私は、数学の理解に時間のかかることが多いです。人よりも要領が良くないのだと思います。イメージするよりも手計算する方が理解に繋がりやすいタイプだと自覚します。 とはいえ、大学での数学の講義では、板書を文字通り無心にとるばかりで何も考えられてい…

なぜ学際研究は難しいか[追記あり]

私は現在、学際的な研究を目指すチームに所属しています。チームの目標は、数学という共通言語を用いて、分野を問わず科学の様々な分野の未解決問題にアプローチし、解決策を与えるというものです(ざっくり言うと)。人類が現象を理解するために用いること…

とある研究者の訃報を耳にして

私は分野が違うために存じ上げなかったが非常に優秀であった研究者の方が亡くなったという話を耳にしました。 どのような研究をされていたのかを知りたくて御名前で検索したらトップにブログがヒットしました。そこには、どのような症状があり、どのようなリ…

勉強したいこと、研究したいこと

勉強と研究は異なる活動です。でも勉強なくして研究はできません。「研究とは違って、勉強は創造的でない」という主張は、個人の価値観を否定し得るものであり、たとえ勉強が嫌いで苦手で祖先の仇であったとしても、行うべきではないでしょう。 勉強せずに研…

2つの整数が互いに素である確率

ランダムに2つの正の整数をイメージしてください。$ (a,b) $としましょう。それらで分数を作ってください。$ a/b $ですね。それがもう約分できない確率はいくらでしょうか? 0.5より大きい?小さい? 答えと証明を載せます。 命題として答えるならこうです。…

中学生から始める適応進化理論2:よくある誤解

2. 自然淘汰による適応進化にまつわる よくある質問・誤解 ここで、リフレッシュのためにも、よくある誤解をいくつか取りあげてみます。 2.1「順応」は人生の一部。だが言葉は変化(進化)する 「社会に適応する」という言葉も既に確立されているので微妙か…

中学生から始める適応進化理論

これから何週間かにかけて、適応進化という考え方、それにまつわる誤解、集団遺伝学初歩、そしてゲーム理論について、やや長めですが、できるだけわかりやすく解説していきます。 本エントリーは、academist社ご協力のもと開催された、下記、講演会『数理で…

新型コロナ時代における持続可能性:「食べて応援!」への杞憂

自粛期間にあって外出することを控えている我々の行動規範は、感染症拡大を抑制するうえでは大きな効果があります。 同時に、経済的にはダメージも当然あって、それは、政府が補償すべきだという姿勢は揺るがないのですが、ただでさえ資源の枯渇した日本にあ…

Zoomで始める公開講演(感謝!)

www.ithems.academist-cf.com 既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、上記のように、web上での公開講演を実施しました。 もともとは、オフライン、すなわち研究所の中で、“オープンキャンパス”よろしく、40人程度の聴衆の前で話をするという会になる…

インパクトファクターは科学者の業績を[必ずしも]測らない

語り尽くされた話題かもしれませんが。 科学における論文出版は研究者にとっても最も重要かつ楽しいものだと思います。その出版論文リストは時として「業績」と呼ばれます。その業績に基づいて、科学者はその「運命」が決まります。いわば就職しやすいかどう…

滝沢カレンさんの唐揚げレシピ:分析

www.instagram.com 話題の滝沢カレンさん。バラエティでの活躍は知っていたし、彼女の(優しい・人を傷つけない)言葉遣いや態度に好感を以前から持っていたのですが、彼女の唐揚げレシピを読んで驚愕しました。 天才としか思えない。僕もこんなのが書けるよ…