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Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

パラサイト・イヴ

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

パラサイト・イヴ (新潮文庫)

1995年は年明け、阪神大震災地下鉄サリン事件で揺れる年に書かれた作品です。
当時はおそらく大学院で博士課程かポスドクかであった著者によって手がけられた、'SF'であり、
'ホラー'でもあると思います。

開始早々の冒頭から、不吉な'事件'が起こってしまいますが、それは非常に日常的には不可解極まりない'事件'であり、
読者はその後、その'事件'がいかにして誘発されたのか、紐解いていくことになります。

ネタバレになるので詳細は控えますが、細胞生物学・進化生物学の話題や実験器具などが頻繁に登場します。
また、論文を投稿してアクセプトされるまでの一連のプロセスの紹介も行われます。
とくに、ネイチャー誌に論文がアクセプトされるという件は、普通の小説にはなかなか出てこず、(経験したことないし、これから経験することがない可能性のほうが圧倒的に高いにもかかわらず)親近感を覚えてしまいました。

物語の前半は、パラサイトの忍び寄る影が不確かで実体がつかめないのですが、後半から急ピッチでその影が本体を現します。
また、並行して展開する2つの世界観が繋がるのは、後半も後半、本当に最後の所だけです。
その勾配はとても急であり、よく言えばアクセントのある展開であり、悪く言えば、急すぎて付いていきにくい。

ただ、ストーリー全体として、生物学の用語や概念(利己的な遺伝子囚人のジレンマミトコンドリアの母系遺伝と、い種間交雑時の非母系遺伝、進化速度の測定、分岐年代推定など)が出てくるため、
こちらとしては納得しながら読み進めることができます。そういう意味で、SFだなあと。

全体的に描写は過激(とくに後半)なので読者を選ぶかもしれませんが、生物学に興味のある読者には、強くオススメする小説です。