Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

協力

Rodrigues, A. M. M., and A. Gardner. 2012. Evolution of helping and harming in heterogeneous populations. Evolution 66, 2065-2079.

友人の論文です。ヨークで血縁選択の話をしていたら「この手法、好きだ!」といって話しかけてきてくれたのです。北大に短期滞在していたこともあるそうで共通の知人も多いし、何より、アーセナルファンということで大いに盛り上がりました。

さてさて。この論文は、集団が「良質なパッチ」と「悪質なパッチ」とから構成されているときに、協力行動はどう進化するかというものです。繁殖はパッチ内で起こるし分散は抑制されているので、集団構造が入っています。
キーとなるのは

  • 良質なパッチでの血縁度と、悪質なパッチでの血縁度。
  • 良質なパッチと悪質なパッチとは、一定確率にしたがって遷移する。自己相関は計算すれど特に気にしない。
  • 良質なパッチと悪質なパッチ、それぞれで育った個体の繁殖価を計算。

進化する形質は、通性的な協力行動と、偶発的な協力行動だそうです。おそらく、パッチの質にしたがって調節するのが後者でしょう。

そうしたとき、空間的や時間的なパッチ質の変動性には協力行動の度合いは依存しない。
また、偶発的な協力行動が両パッチで進化する。

特に、血縁度の計算から繁殖価の計算に至るまでのプロセスが、うーん。包括適応度理論屋のちからワザ!
とても勉強になりました。特に、繁殖価の計算はとてもエレガントでわかりやすかったと思います。

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あすはモンペリエ大学でセミナーです。そこのチームの一人から、めっちゃ面白いから論文くれ!っていうメールをもらって、歓喜しました。研究者として研究を続ける一番の喜びはここだ、というのが深くわかりました。今後も精進します!なんせ、自分の研究は面白くやりごたえを感じています。