Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

ノロウイルスとの激闘とそこから学んだこと

3月は頭から激忙でした。 3/5は翌日のための発表準備でほぼ徹夜で作業敢行。修士や卒研の後輩たちにはさんざ、「発表準備をギリギリにするな」とえらそうに言っていたわりに、先輩はこれです。でも言い訳させてもらうと、「どこまで削るか」という段階ではあったのです。

3/6にはGame Theory Workshop 2015にて招待発表の機会を頂戴し(Oさんありがとうございました)、無事に発表を終え、懇親会では2:00くらいまで日本酒をスイスイと。

3/7は、午前のセッションでは頭が自重に耐えられなかったようでしたが、少し早めにおいとまを頂き、山口は宇部へ。兄夫婦や義姉の妹たち、そして兄の友人たちと2:00くらいまでドンチャン騒ぎ。牛たん、酢ガキ、タコの石焼…どれもこれも、絶品でした。ここでも日本酒を何杯もちょうだいしました。はじめての獺祭も満喫。

3/8は朝8時に起床のち、シャワーを浴びてみんなで新山口駅まで行き、ボクは博多へ、彼らは神戸へと発っていったのでした。その12:00前には博多に到着したので帰宅。そしてフットサル大会にむけて公園で練習。14:00から大会。結果は芳しくないばかりか、最後には尾てい骨に蹴りを入れられ、非常に痛い思いをしました。

大会後にはメンバーで打ち上げを行ない、日本酒をスイスイと頂きました。24:00くらいまで飲んで、帰宅。その3日間の激動を終え、歯磨きをしてパジャマに着替え、安心して就寝し、朝を迎えるはずでした。心地よい眠りに身を預ける僕。

そう、2:36に、猛烈な吐き気を感じて目がさめるまでは…

ノロウィルス感染に伴う症状1:吐き気

このトシになってくると、「吐き気」に確信を持つことができます。小さいころは、「これは吐き気なのだろうか?」という迷いが見られました。*1

でもそんな迷いはもう捨てました。

さてそんな27歳の男、2:36に目が覚め、吐き気を確信。酸素をたっぷり吸って持ちこたえるも、限界。「飲み過ぎたか…」と観念し、いさぎよくトイレへ。地獄の始まりとも知らずに…

3:32 ふたたび吐き気で目覚める。「…またかいな?」さきほど吐いてからお水をしこたま飲んだのに…と思いつつも、また繰り返す。終えてからは水を飲む。

4:27(か29) みたたび。これでもか、というくらいに…。また水を飲む。…ひょっとしてウィルス性?……まさか……?

5:29(か27) しつこい。っていうかもはや何もでない。。。このころには、下痢もおともする。そして、下痢の様子が少し違う。いつもの君ジャナイ。…水だ。。この頃には、ノロへの嫌疑が確信にかわる。だって、噂には聞いていたのです。

便がそれはもう…スゴい、と。

5:39 サッカー友達に「ごめん。。。体調が絶望的に悪化したので今夜のサッカー無理ぽです。。帰宅してからずっと、寝ては吐いてます」と、LINE上で遺言を送りつける。さすがにその晩のサッカーは断念。

10:46 義姉にメール。

「おほほ、ノロにかかった…」

そこからしばらく義姉とやりとり。めっちゃ仲がいいというのもあるが、彼女は看護師だったので便りになるのです。病院に行けたら行くようにと言われるも、意識が絶える。

14:00ごろ? ぬっと起きて、水を飲む。とにかく喉が乾く。胃が空っぽなのも気持ち悪い。なにか食べるものはないか、とかばんをあさると…

なんと、、、ウィダーインゼリーが!!

そう、宇部でベロンベロンに飲んだあの日。「翌日の朝ごはんに」と、購入していたのである!自身の英断を讃えつつ、チュルンと完食。それがうまいのなんの。

18:47 義姉から着信。寝ていたので出られず。ほどなく、かけ直し。17分ほど、兄(医者)をまじえて三人で会話。いきなりビデオ通話にしてきやがこられたので、戸惑う。髭ボーボー、髪ボサボサ、幸うっすい顔でお出迎えすると、

「きったねぇ顔〜〜!!ゲラゲラゲラ」

と笑われる。とりあえずいろいろとアドバイスを受け、外に出る決心をつける。

ノロウィルス感染に伴う症状その2:発熱

19:35 シャワーをあび、熱を測る。38.1度。義姉にも生存確認のメールを送ってから、最寄りのセブン-イレブンへ。

大量のウィダーインゼリーと、スポーツ飲料、熱さまシートをカゴに入れる。さっさと買って帰ろう…と思ったら、レジでnanacoカードへの加入を薦められる。

なんでこのタイミングでお嬢さん、無慈悲な…と思ったら、このかた研修生。これは漢気みせなあかんやろ、ということで、必要事項を記入して加入。彼女に幸あらんことを。

お嬢さんの達成感にあふれた笑顔を横目にふらふらで帰宅。体調悪いときは高価な壷の契約をさせられないように注意せねばならない。

20:15 帰宅。ウィダーインゼリーをがばがば飲んで、睡眠。

3/10に突入。

13:00 起床。とりあえずウィダーインゼリー。気分は悪くないが、頭痛が止まらない。熱さまシートを貼って眠る。アーセナルマンチェスターUに勝利(@FAカップ)したことを知り、ウェルベックのゴールやモンレアルのゴールを何度もにやにや眺める。

そこから時間の記憶がおぼろげ。

ノロウィルス感染に伴う症状その3:下痢

20:00ごろ目覚める。だいぶん体調が回復したので、トマトサラダを作って*2食べたり、ヨーグルト食べたり、ウィダーインゼリー飲んだり。

しかしそこから、この世のものとは思えぬ下痢のターンが。それまでに摂取してきたウィダーインゼリーがすべて出てきた気がする。もったいな。7,8回はトイレとベッドを往復。トイレットペーパー1ロールをなんと一日で使い切るという暴挙。

曲りなりにも研究者のワタクシ。ノロウィルスは高温・アルコールへの耐性があることを知り、それならばと次亜塩素酸やな!ということで便器周りをこまめに、ハイターでお掃除。おかげで便器がペカペカ。掃除やトイレのあとは、石鹸でしっかり手洗い。普段からこのマメさがあればね。環境負荷が高いハイターですが、分解力の高さはとても助かる。ついで、台所で使ったグラスの類もすべて、ハイターでお掃除しておいた。

結局1:00すぎまで眠れなかったけど、3/11にはようやく復帰。体のだるさは少しあるものの、ほぼ通常運転状態まで回復しました。しかし快復祝いに「かつや」でロースカツ定食を食べてしまい、しばらくフラフラ。もっと胃に優しいものを選ぶべきやってけど、胃が脂を欲していた…。

ノロウィルス感染時には、医者にかかるべき?

ノロウィルスの症状には、嘔吐・下痢・発熱に加え、本当は腹痛というのもあったみたいです。でも今回は僕には表れませんでした。筋肉痛だったから、というのもあるかもしれませんが、胃が痛んでのたうち回る、という、インターネットにあるような体験談はできませんでした(したくない)。

ノロウィルスやインフルエンザにかかると、「病院に行くとウィルスを撒き散らしてしまうから、控えるべきか?」という疑問が取りざたされますが、これは定性的なYES/NOでは答えられないように思います。ノロウィルスにしろインフルエンザにしろ、それ自体はホストを完全に蝕んで殺してしまうことはありません。怖いのは、それに伴うシンドロームだと思います。代表的なのは脱水症状だったり、普通の風邪の場合は肺炎でしょう。

そういった併発を起こしやすい、あるいは自律的に防ぎにくいのが、幼児・老人といった年齢の方々なのです*3

なので、そういった方々に対しては、夜間であったとしても、医師の適切な処置を仰がせるのが望ましいように思います。撒き散らさないためには救急車を呼べばよいわけですし(おそらく車内での排泄物の処理に関しても対応してくれるだろう)、症状が和らぐのなら、そちらの道を選ぶべき。

また、「ノロウィルス」は病気ではなくウィルスの名称です。それが体内に入り込むことで体が反応し、様々な排泄・生理がはたらくのです。ウィルスの種類はともかく、ウィルスによって胃腸周りの調子が落ちることを、「急性胃腸炎」と呼びます。今回のボクのような典型的な症状は「ノロウィルスだ」と自己判断できるのですが、一般には、より重篤感染症である可能性もあるわけなので、医師の診察を受けて判断を委ねるほうが賢明なように思います。

そういったことで悩む前に、診療所へ連れて行き、吐瀉物などの処理をハイターで行ない、使用した食器や汚れた衣服の徹底的な消毒する方法を調べたほうがいいと思います。

とはいえ、酢●キという明らかな戦犯が思い当たるなら、ノロに感染している尤度は一気に高まります。その場合、命を削ってまで外出はせずに、ひたすらスポーツドリンクを買い込んで籠城戦に持ち込んでもいいと思います。賢明な判断を下せる限りは。

ノロウィルスの進化

その、病院には行っていない当の本人は、ゴロゴロしながらも、ノロウィルスのこと、たくさん勉強させて頂きました。

ノロウィルスの多様化(たくさんの種類が生まれること)には、特定の座位間での組み換えがキーになっているのではないか?という論文 http://jvi.asm.org/content/84/16/8085.short Divergent Evolution of Norovirus GII/4 by Genome Recombination from May 2006 to February 2009 in Japan.

ウィルスなどは世代時間が短くかつ集団サイズが大きいために、突然変異によってサブタイプ(枝わかれしたできた新しい系統)が連続的にどんどん出現してくる(進化が速い)のです。そのサブタイプは、特定の座位の間の組み換え(遺伝子のシャッフルのようなもの;これは生物に通有的な現象です)によってできているということです。それを特定した、というのがこの論文。

現在、ノロウィルスには有効な治療薬が見つかっていません。しかしこうした基礎研究で解明されたゲノム情報を用いることで、将来の治療薬の開発に期待ができるのかも知れませんね。

一般には下痢の原因は複数ある

正露丸ノロウィルス対策ページが、全然示唆がなくて面白いです。

ノロウイルス篇 | おなかの悩み相談室 | 大幸薬品株式会社

ウィルス性の胃腸炎の場合、ウィルスを早く出すために、「下痢止めを服用すべきでない」という意見があります。まず、下痢のメカニズムは複数あって、特に、ウィルス性のもの、過敏な反応によるものです。前者はウィルスを早く体外に排出するための体の応答で、後者は冷気などに体が応答しすぎてしまうものです。

それに応じて下痢止めにも2種類があります。体の過剰応答による下痢に対しては、「腸の動きを止める」下痢止めが有効です。応答をストップさせてやるという、なかば強引なしかし確かな治療と言えます。

しかしウィルス性の下痢の時にそれをしてしまうと、ウィルスを外に出したいのにもかかわらず、腸の動きが止まり体内でウィルス集団が増殖し、さらに快復が遅くなってしまいます。なので、そういう時は胃腸の動きを止めない下痢止めを服用しましょう。

で、正露丸はどっちやねん?と思ったら…あっさりとノーコメント。「ノロの時は飲まないで」「ノロにも有効です」という提言を、根拠とともに示すのが、企業としては望ましいように思うのですが、他にウェブサイトはあるでしょうか。

不顕性患者の存在

それにしても、ノロウィルスに不顕性感染者、すなわち感染しているのに症状が出ない人(場合?)が実在するというのは面白い。それがもしもノロウィルスの(伝播の)戦略だとすると…?

マダガスカルを思い出す

マダガスカルで食中毒に感染して、1ヶ月も下痢が続いたのは、3年前の3月。懐かしい。

カキに中たる、といえば!

https://www.youtube.com/watch?v=W3TqbuxYP8Q

*1:9歳のクリスマスには、パンプキン・マフィンをお昼ごはんに食べたその晩に気分が悪くなり、薬を飲まそうと口に突撃してきた母の手先に盛大にドバァしたことがあります。それ以来、パンプキン・マフィンが嫌いです。カボチャも。マフィンも。好きなのに。。

*2:ノロウィルスに感染した人を調理台に立たせてはいけない!

*3:赤ん坊やご老人は体質的に弱いというのと、じぶんで判断して行動を起こせないためです。たとえば赤ん坊が冷蔵庫をあけてスポーツドリンクを飲むなどは考えにくい