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Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

TREEFINDER (2004) の掲載が取り下げられていた

TREEFINDER (2004) は、分子配列データから系統樹をグラフィカルに描くための有用なソフトウェアとして、これまで1000件ちかく引用されてきました(Google Scholar Citationしらべ):

研究者は、研究に役立つソフトウェアを作った場合には、それに関する論文を投稿したりすることで、世にその存在を知らしめるのですが、そのTREEFINDERはBMC Evolutionary Biologyという、Open Accessのジャーナル、即ち誰でも閲覧可能なジャーナルに掲載されていました。

http://dx.doi.org/10.1186/1471-2148-4-18

ふとしたきっかけでそのサポートサイトを目にしたことがあったのですが、まっさきに目がつく、License change and re-releaseの項目。

Starting from 1st October 2015, I do no longer permit the usage of my TREEFINDER software in the following EU countries: Germany, Austria, France, Netherlands, Belgium, Great Britain, Sweden, Denmark - the countries that together host most of the non-european immigrants. For all other countries, the old license agreement remains valid. USA has already been excluded from using Treefinder in February 2015. This is all in accordance with the license agreement stated in the TREEFINDER manual since the earliest versions, which reserves me the right to change the license agreement at any time. I can do this because Treefinder is my own property.

The reason: I am no longer willing to support with my work the political system in Europe and Germany, of which the science system is part. There is no genuine democracy, and I disagree with almost all of the policies. In particular, I disagree with immigration policy. Immigration to my country harms me, it harms my family, it harms my people. Whoever invites or welcomes immigrants to Europe and Germany is my enemy. Immigration is the huge corporations' interest, not peoples' interest. I am not against helping refugees, but they would have to be kept strictly separated from us Europeans, for some limited time only until they return home, and not being integrated here as cheap workers and additional consumers. Immigration unnecessarily defers the collapse of capitalism, its final crisis. The earlier the system crashes, the more damage can be avoided. Possibly a civil war in Europe. Not to mention the loss of our European genetic and cultural heritage.

…おおおおおおぉぉぉぉ…。なかなかアグレッシブな内容です。日本語になおしてみると…

  • 2015年10月1日より、著者[Jobbさん;以下、J]は、以下のEU圏国におけるTREEFINDERの使用を認めない:ドイツ、オーストリア、フランス、オランダ、ベルギー、イギリス、スウェーデンデンマーク
  • これらの国は連合して、非常に高い割合の非EU移住者を受け入れている
  • それ以外の国における、以前のライセンス同意はいまでも保たれている[のでソフトウェアは使える]
  • アメリカは2015年2月の時点で、すでにTREEFINDER利用可能国から外してある
  • これらはすべて、初期バージョンのTREEFINDERマニュアルにおいて宣言されたライセンス同意に基づいたものであり、そのうえでJはいつでもライセンス同意条項を変更することができる
  • これが可能なのはTREEFINDERがJの所有物[property]だからである

上のようなライセンス同意条項変更の理由

  • Jは今後、自身の研究によってヨーロッパ・ドイツ[以下EU/G]における政治制度(含、科学制度)を支持したくない
  • EU/Gにおける民主制はまったく信頼に足らないし、ほとんどすべての政策にJは反対である
  • 特に、移民に対する政策には猛反対である
  • 我が国[Jの国、ドイツ]への移民は私を、家族を、そして私の友人たち[の権利]を侵害する
  • EU/Gへの移民を招き受け入れる人は皆、Jの敵である
  • 移民[を受け入れる]というのは、大企業の利害でしかなく、人々の利害ではない
  • Jは、難民を幇助するのに反対なのではない;[移民や]難民は、我々ヨーロッパ人からは明確に切り離され、別物として扱われるべきである
  • その受け入れ期間も、無事に帰国するまでの限定的なものであり、格安労働者や浪費者として住まわせるべきではない
  • 移民制度はいたずらに資本主義の崩壊を遅らせる
  • システムの崩壊が早ければ早いほど、被るダメージは軽くて済む
  • ヨーロッパにおける市民戦争も起こりうる[のでそのようなダメージを軽く済ませたい]
  • 我々ヨーロッパ人の遺伝子・文化の損失は、言うまでもない

ひどい…。最後の一文に至っては、政策どうこうを越えた、人種差別的思想でしょう。

しかしこのたび、その論文が取り下げられていていました。

Retraction Note: TREEFINDER: a powerful graphical analysis environment for molecular phylogenetics | BMC Evolutionary Biology | Full Text

The editors of BMC Evolutionary Biology retract this article [1] due to the decision by the corresponding author, Gangolf Jobb, to change the license to the software described in the article. The software is no longer available to all scientists wishing to use it in certain territories. This breaches the journal’s editorial policy on software availability [2] which has been in effect since the time of publication. The other authors of the article, Arndt von Haeseler and Korbinian Strimmer, have no control over the licensing of the software and support the retraction of this article.

別の著者(2人)はライセンスを変更する権限がなく、掲載取り下げに同意しているようです(実際Strimmerさんは、別のポータルサイトでこの件のことを謝罪していた)。

オープンアクセスの価値

興味深いのは、BMC側は、ソフトウェア論文の掲載ポリシーにもとづいて取り下げを行なっていること。BMCはもともとオープンアクセスジャーナルを取り扱うところなのですが、ライセンスが限定される時点で、「オープンアクセシビリティ」が損なわれると考えたのでしょう。このようなオープンアクセシビリティがスタンダートたるべきであることが改めて実感させられます。