論文の謝辞で気をつけること:無難な書き方
論文の最後のパートでは『謝辞』を表明します。論文に対して実質的に貢献は無いが、個人的な補助や、資金面のサポートを助成金によって受けた場合には、謝辞に表明します。
でも案外、謝辞を書くのって難しいです。こんなサービスすらあります。
さて、論文の謝辞を表明するにあたって、すこし注意せねばならない点があります。これってどこまでアカデミアで共有された概念なのかは分からないのですが、(存在しない)利益相反などを匂わせないためにも、すこし慎重になる必要があります。
以下は、僕が「しないことリスト」でもありますが、それを「しない」「目的」を明確にするような書き方を心がけたいと思います。
1. 同列に並べるのであれば、アルファベット順で。
日本語なが五十音順。たとえば「えらいひと」を先に書いてはいけません。たとえば
The authors are grateful to G, B, C, F, D, E, and A for comments on the previous versions of the manuscript.
などとはしない。たとえ、Gさんが一番立場が上の人で、ソレ以外が学生であっても。同列なのですから。論文の謝辞において、(存在しない)背後の関係を匂わせる書き方をしてはなりません。 ステレオタイプを生み出す可能性があります。したがって、
The authors are grateful to A, B, C, D, E, F, and G for comments on the previous versions of the manuscript.
としましょう。無難ですね。
2. エディターへの謝辞は…?
ジャーナルによっては、エディターの名前を明記した謝辞を禁止しています*2。エディターはあくまで中立的な立場ということを鑑みてでしょうか。いずれにせよ、(記名つき)レフェリーにしろエディターにしろ、名前を出さないほうが無難かもしれません。
3. 承諾を得る
過去に僕もやってしまっていたのですが、このエントリを読み、心を入れ替えました。
No unauthorized acknowledgements!
I don’t understand why anyone would do this, but it is a really bad idea. Check with the people you acknowledge and be sure they are all right with it. Only acknowledge people who actually have helped with the work.
Grrr.
事の経緯は2年前にとある群淘汰主義者たちから出版されたNature論文の謝辞なんですが…どうもStrassmannさんは、了承もなく謝辞で名前を使われ、あたかもその論文に対して好意的であるかのような印象操作を行われた。
ということで、謝辞で名前に言及するのであれば、事前に了承を得ておくのが無難です。メールでコメントをもらったなら“Please let me show my gratitude in Acknowledgement”などと添えて返事するのがよいでしょう。
僕はいま書いている論文の謝辞では、
- どのような補助を得たか(コメント、解釈についての議論、などなど)ということを明確に
- 了承を得ているか
などを表明することにしています。こんな感じ(個人情報につき、ここでは名前は伏せます)。
The author is grateful to A and B for discussion, and to C and D for comments that enriched the interpretation of the results as well as for suggestions to improve the clarity. The author declares that I am expressing my gratitude here in pre-agreement with all the colleagues above. The comments provided by Associate Editor and two annonymous reviewers greatly improved the clarity of the manuscript.
無難ですね。