Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

海外研究者と日本で交流しよう

以前のエントリで、日本の公募システムに対する意見を述べたのは、当然ながらそこへの不満があったからなのですが、日本の(少なくとも進化生態学の)学会などが、国外からの研究者を学会に積極的に呼ぼうとしていることについては、本当に素晴らしいと思います。

もちろん、僕は日本国籍を持ってはいても、アメリカに住んでいるので理論上は「海外研究者」なわけですが、ここでは「日本国籍を持たない海外研究者」を考えます。現に、いくつかの科学研究費などは、日本国籍を持つ研究者の招聘については、除外していることが多いです(し、それで良いと思っています)。

僕は、修士や博士のころに、積極的にヨーロッパでの*1国際学会へ出かける習慣がありました。特に、たとえばラボ全員が行くような国際学会は、極力避けていました。みんなで同じ宿に泊まったりするのも楽しいでしょうが、学会に行ってまでラボの人とずっとつるんでいても仕方ないし、単騎で乗り込むほうが、社交性も英会話も鍛えられると思ったからです。*2

それでも、国外に行くのはとても高い。そこで目をつけたのが、国内で「海外研究者を招聘する学会」です。これは非常に良い。日本で安い旅をして、海外の研究者と交流できる。最高です。

ということで、いくつもの、日本での国際学会に行きました。東北・京都・滋賀・などなど。そこであえて国外の研究者たちと交流することには、いくつものメリットがあります。すこし打算的な表現ですが、メリットです。

日本人だけの環境において、英語で話しかけられると嬉しいだろう

日本語を話せる人口はそう多くありません。日本語を話さない彼ら彼女らが日本へきて戸惑うのは間違いなく言葉の問題です。そんな環境において、彼らに英語で積極的に話しかけるのは、間違いなく好印象をもたらします。

打算的でしょうか?でも、自分が国外へ行って同じようにしてもらえたら、嬉しいですよね?お互い様ではないですか?*3

僕は、学部の頃には、「英語で日本語を教えるボランティア」を一年だけしていました。キャンパスで、道に迷っている人を見つけたら、一緒にそこに連れて行ってあげたりしていました。今思えばそうした経験は、非常に貴重です。いまでも町中で外国人にはいろいろ教えます。

ある意味で「四面楚歌」な彼らに救いの手を差し伸べる勇気がありさえすれば、簡単に友達になれるわけですね。

英会話へのスウィッチ

みんなでご飯へ行くときに1人だけ外国人。そんなときは思い切って、英会話にスウィッチしましょう。それはふたつのメリットがあります。ひとつはもちろん、自身の英会話感覚の向上に関する部分。はっきり言って、みんな「へたくそ」なわけです。でもそれでいいんです。下手か上手かよりも、日本人としての英会話を行なって、意思疎通がとれたらそれでよいのです。

もうひとつは、そこにいる非日本語話者に、日本人の英会話ペースを理解してもらえることです。みんながみんなペラペラ話せないことを分かってもらえるだけでも、日本の状況への正しい理解につながっているわけです(悲しいかな)。

大事なのは、間違いを恐れないこと。僕の経験では、他者の英語を笑う人は英語の向上が遅いです。理由はシンプルで、「うまく話さないといけない」という誤解をしているから。

「日本で会いましたね」

上にも関連しますが、日本で共有した経験は、自分が異国へ足を踏み入れた時に巡り巡って返ってくることがあります。僕はいままで何度、国外で「日本で会ったね!」という挨拶をしたか分かりません。外国人と簡単に経験を共有できる環境が、日本にも提供されているわけです。彼らもそうそう薄情ではないわけで、まわりのひと達にも「彼とは日本で会ってね…」といった紹介をしてもらえるわけです。

ま、これもちょっと打算かも知れませんが、「日本で会った」という経験の共有は、ただ単に再会する以上の気持ちを呼び起こすわけです。学会の目的が人と話すことである以上、僕にとってはそうしたシンパシーがとても自分の研究の原動力になっている気がするのです。

日本まで来てくれてありがとう!とメールする。

学会が終わったらこうしたメールを一通送るだけで、相手は相当喜ぶはず。自分も気持ちいいし、一石二鳥。内容なんて、雑談のはしっこの「この論文面白いよ」とかでもいいわけです。それに、あなたの日本語の名前、思った以上に覚えてもらえていませんよ。日本人の名前って難しいんです。でも、メールを書いて覚えてもらったり、送付先リストに加えてもらうだけでも、まったく違いますよね。

ただし…!

挨拶メールの書き方。これはともかく経験しないと上達しません。失礼のないように気をつけた方が良いでしょう。

友達になろう

日本人は年齢次第で態度を変えることが美徳とされていますが、アメリカやエウロパではそうではないと思います。フランクに、友達になっちゃいましょう。FBでもTwitterでも何でもよいんです。SNSは友情を表すとは限らないし、握手やハグするだけで、その結束は変わってくる。でも相手の出方を見ましょう。フランスだとほっぺ同士をぶつけあいますが、下手すると顔がぶつかりそうになります。まるで、廊下ですれ違いそうな相手をよけて右に歩んだら相手も同じ方向によけてくるパタン。気をつけて。

自己紹介をしっかりと!

「何研究してるの?」

は相手の最も大きな引き出しに手を伸ばせる、魔法の言葉です。そして自分の研究は英語で話せるようにしておきましょう。僕は、外国人のいる懇親会では、研究スライドを紙芝居のように持ち歩いたりしていました。

でまあ、我ながらこう書いてみると、僕の日本での行動は、常に国外を目指したものだったことに気づきます。指導教官からの影響は多大ですが、こういう行動は着実に、経験値となっていきます。こうした思いから綴った、長めのエントリでした。

*1:なぜかアメリカには行ったことがなかった。理由はご飯のせいかなあ?自分でもわからない。

*2:初めて単身で乗り込んだ学会は、ネイティブの知り合いが1人だけいる学会で、日本人がゼロ。これは本当に精神的に相当に鍛えられました。いまでもそこで知り合った研究者とは交流があります。当時、論文の出版もなくただただ自分の結果を引っさげて、イギリスはYorkまで乗り込んだわけです。今思えばむっちゃ楽しかったです。

*3:個人的経験では、いまんところ、アメリカ人と友人になるのは僕にはとてもむずかしい反面、別の国…たとえばカナダ、中南米、ヨーロッパ、アジアなどの国々からの人と仲良くなるのはむっちゃ簡単です。彼らも英語は非常に達者なのが普通ですけど、アメリカ文化への順応という困難を共有しているのはやはり大きい。同じ理由で、フランスでは別の国からの人たちと友達になるのは比較的簡単です。