Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

単著論文のすすめ

論文を仲間と協力して書くのは、最も楽しい活動だと僕は思います。構造やら図の作り方やら結果の見せ方、議論の仕方をあーだこーだと議論しつつ、ウェブの投稿システムに論文を投稿したり、カバーレターやリプライをどうくみ立てるか、その苦楽を文字通り共にする時間は、生きている実感すら与えてくれます。末長く、一緒に研究を進められるパートナーがいるととても心強いし、切磋琢磨しあえるでしょう。

 

もう一つのやり方は、単著論文。一人で遂行・執筆・投稿・改訂しまうことです。一人で一から百まで全てやれる研究は少ないため、実際は、技術以上に、事情・環境的に難しいと思いますが、実は学生のうちに挑戦しやすいと思います。

 

なぜならば、ステージが上がるにつれて、「社会」と独立に研究することのほうが困難になるためです。一部ポスドクなどプロジェクトベース立場の場合には、雇い主との議論を通じて論文を書くのが望ましいでしょう。

 

フェローシップの場合も、せっかくならば、ホスト先の研究者とコラボするべきでしょうし、そもそも普通はそういう協働目的を前提にフェローシップに申請します。

 

パーマネントの助教や准教授になると、受け入れる学生との仕事がありますし、それまでの任期付き不安定な立場でなかなか進められなかった、ポスドク時代の協働研究をまとめる機会になります。

 

教授になると、大きめの研究費をとってきて、さまざまな協働研究の場を提供する立場になるでしょう。忙しくなると主著論文へのエフォートもなかなか割けなくなります。

 

つまり、ステージを積めば積むほど、社会との関わりが強くなるのです。それは素晴らしいことですが、単著論文を書くチャンスが減るということでもあります。

 

以上の理由から、学生のうちこそ単著論文を、という考え方を目指すのは、良いことだと思います。自立的に研究する自己鍛錬のチャンスです。そしてそもそも、自立あっての協働です。協働したくば自立せよ。そのくらいのメンタリティで、野心的に突き進んでも良いと私は思います。