Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

再投稿可のエディター・リジェクト

エディター・リジェクトとは、ジャーナルごとに数人わりあてられている編集者(エディター)が、論文掲載を監査するプロセスである「査読」の前に、著者たちに「掲載不可」と告げることを指します。

とらえ方は千差万別ですが、エディター・リジェクトは精神的にも研究的にも、きついものがあると思います。エディター・リジェクトは、早ければ10日程度で手元に届くので、(リジェクトは「もうその研究に関する原稿は投稿してくるな」ということなので)さっさと次の投稿先を探せるというメリットはあるのですが、価値を初めから否定された気になるというのと、「じゃあどうすれば良くなるか」という具体的提案のないまま、次の投稿先を考えねばならないのです。改善されないまま、「だめだ」と言われた原稿を投稿せざるを得ないとなると、次の投稿先でもリジェクトされる可能性があります。

で、今回ぼくも、はじめてエディター・リジェクトを喰らいました。どうもありがとうございます。しかしここで興味深かったのが…

「再投稿可能のエディター・リジェクト」

しかも

匿名の副エディターからの、インテンシブなコメントつき

再投稿可能というのは、「だめだけど、もう一回みてやるよ」ぐらいの意味です。

副エディターというのは、エディターの次にエライ(=原稿の掲載可否に関する決定権を持っている)人のことです。その副エディターから、けっこうインテンシブなコメントが届きまして、それを吟味しているところです。

数理モデルの仮定と、結果の解釈についてなかなか辛辣な言葉も書いてありまして、届いた時はそれはもう、心が折れそうになりました。

しかし、落ち着いて読み返してみると、アレッ、意外に答えられそう…という気がしてくるものです。

副エディターから厳しいコメントがきた割には再投稿可能というのは、ズルいというか、コンコルドの誤謬に誘われている危険な感じもするのですが、原稿の価値自体は認めてくれたとかんがえることにしましょう…。

言語学と寄生虫学

我々は英語を発音するとき、「訛り」を認識し、しかもその地域ごとの特徴をある程度は理解することができます。ヒトでの実験によれば、「寄生者感染」が念頭にある(=ヒトの意識が寄生者感染によってプライムをうける)と、その訛りをより認知しやすくなるのではないか、という研究。

Parasite primes make foreign-accented English sound more distant to people who are disgusted by pathogens (but not by sex or morality) Reid et al. 2012, Evolution and Human Behavior.

自分とは遠い訛りアクセントをもった人というのは、自分が経験したことのない真新しい寄生者を有している可能性がある。そういうアクセントをキューとして外国人嫌悪や自民族中心主義が心理的に獲得されてきたのではないだろうか、という仮説。面白いですね。

英語で調べているけど、古くは「言葉の通じない相手」との接触があったことでしょうから、古い起源は確かにあったのかも知れません。

なお、性的なプライム、銃を始めとする命に関わる事件のプライムはそういった認知力を高めることはなかったようです(有意ではなかった、というだけのことですが)。

早期脱稿

原稿を長いこと抱えても、いいことは少ないですね。さっさとコメント依頼するなり共著者に投げるなり投稿するなり英文校閲にかけるなりをするべき。

そのためにはもちろん、さっさと書くべし…

スアレス自伝の帯文句「噛み付きは無害に近い行為なんだ」

スアレスの自伝『理由』が発売されました。

www.amazon.co.jp

スアレスといえば、これまで3度、相手選手に噛み付いているヴァンパイアとして有名です。

しかしヒトがヒトに噛み付くことで伝染する病気やウイルスが、5つはあるそうで。

  1. 口内菌
  2. B/C型肝炎
  3. HIV
  4. ヘルペス
  5. 狂犬病?

ということで有害です。 http://www.smithsonianmag.com/smart-news/5-diseases-you-can-get-being-bitten-human-suarez-180951847/?no-ist

論文の別刷り請求のすゝめ

「あ、この論文、うちの大学からだと落とせないな…」

そう思ったらすぐに別刷り請求しよう。

別刷りとは、著者がもっている論文・記事などのドキュメントファイルのことだ。僕は、落とせない場合にはほぼ脊髄反射でメールを送る。思わぬ議論につながったりもする*1し、面白い。

  • べつに怖いことはない。
  • むしろ著者は喜ぶだろう。
  • 英語で書くための例文なんて、ネット上にいくらでもある。
  • 友達が増える。

僕はだいたい、以下のようにする。

0. 準備

  • メールをテキスト形式にする。文字化けを防ぐため。
  • 署名の体裁をチェックする。ウェブサイトのリンクを貼るなど、自分のIDを示す工夫を。
  • 相手の性別をチェックする。念のため。
  • 相手の称号をチェックする。念のため。

1. タイトル

スパムと間違えられないように、"Reprint request"などとハッキリ書く。

GoodとかNiceとか相手(の論文)を褒めるタイトルはもう、SPAMメールのそれそのものだ。

2. 本文

  • まずは、メールを書いている理由を述べる。I'm writing this e-mail to ask you for XXなど。
  • 自己紹介をしてもいい。I'm XX, a PhD student with YY at ZZ.
  • そして、ほしい論文の情報を提示する。Google Scholarの「引用」ボタンで出てくる引用形式+DOIや、DOIに基づくURLを表示すると話しが速い。
  • その後、Supplementary InformationやAppendix、あるいはプログラムのスクリプトが欲しいのであればそれも書く。

3. 結び

  • Sincerely yours, はたとえば会ったことのない相手に返信する(まさにフォーマルな)場合に用いる。
  • Best wishes, とか Best regards, はなにかお願いしたときに書くので、ここではこれもOKだろう。
  • Best, は「じゃ、またね」ぐらいの軽い感じなので、友達同士ならOK。
  • Cheers, は「かんぱーい」というくらいのラフな感じ。フランクに話せる友達同士ならOK。
  • Thanks in advance, はちょっと急かされてる感じがする。無理言って申し訳ないがなるべく早めにお願いを聞いてくれ、と要求したいときに書くので、ここではちょっと不適切。

4. 返事

返事がもらえたなら、すぐに返そう。

  • ありがとうはもちろん言う。Thank you very much!
  • 自分の研究の話もチラつかせる。I'm interested in your papers because....
  • いつか会えますように。I hope we can meet up in the near futureとか。
  • 国際学会の予定があるならそれもチラつかせる。 PS I'm visiting XX to attend the conference of YY in 20ZZ.

メールでも友達ができる時代だ。ResearchGate、LinkedIn、ウェブサイトくらいは持っておいて常に更新しないと、研究者としては社会に存在しないも同然。

*1:別刷りをくれた研究者の兄妹の配偶者が九州出身だったりしたときはびっくりした