Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

社会で自律した研究者

研究が研究者の仕事であるということは間違いない。

しかし、研究者というのは、壮大な科学分野の中の一個の人間であり、コミュニティの中の一つの点である。つまり社会との交わりなくして、あるいは他の研究者の存在なくして、成立しない、常に相対化された存在なのである。

常に人と関わるということ。それはつまり、常に人に影響を与える存在であるということだ。

その意味で、研究者というのは責任重大である。講義したり勉強を教えるのはもちろん、研究指導、セミナー運営、有機的な組織運営…コミュニティ成立にともなう、ありとあらゆる責任があると言ってよい。

多様な研究者がいることは良いことだ。いろんなスタンスがあって良いだろう。しかし、社会との接点に対して無自覚であることは、研究者としての責務の放棄である。常に自分より若いステージの研究者に、研究者は見られている。心は見えないので、行動を見られている。どのような研究者になりたいか?心は真似できないが、行動は真似できる。研究者の行動は、次世代のコミュニティのあり方を大きく左右する。

これはどんな会社でも多かれ少なかれそうかも知れない。しかし、研究者の「ニッチ構築」効果は、会社と比べても顕著だ。会社は、内部改革を経て変わることや、社会情勢の結果で一新されることがある。畳まれるのは一つの形だ。一方アカデミアは、新しいことをするために前人の轍を歩むという性質上、引き継がれ続けるものが多い。これは、研究の内容に限った話ではなく、職業研究者のあり方そのものにもあてはまる。

学生の模範になる、なんて必要はない。だが、自分の態度、精神、研究、行動、あらゆるものが、見られている。プロの研究者であるということは、それら総体をどう律してしているか、ということに懸かっている。

あらゆる研究室において、心理的安全性が重要なのは間違いない。だが、プロとしての規律のない態度では、ヌルい研究室になるだけだ。自立的で自律した研究者。私は、それを目指したい。