僕はラーメンが好きですが、「コスパ」という言葉はあまり好きではありません。コスパというのは、コスト・対・パフォーマンス(コスト・パフォーマンス。費用対効果)の略です。この言葉はおそらくネットを通じて広まるところとなり、たくさんの人が使っているのを耳にします。
しかし、「費用対効果」って、「効果」を\( Y \)軸、「費用」を \( X \)軸にのせてプロットすると仮定すると、まっすぐの直線なの?ぐにゃぐにゃの曲線なの?といった情報もなければ、個人の経済状況の考慮なしに、「イメージが共有されていること」を強いる言葉だと思うのです。背景を共有しないと、「コスパ」に基づいた主張は意味を持たない。
さて、ラーメンは実に単純に人々に幸せをもたらしてくれます。「喰う寝るふたり住むふたり」という漫画には、ラーメンをすするシーンがたくさんでてきます。そのラーメン屋の店主は、近年の「健康志向ラーメン」「insta映えするラーメン写真撮影」「SNSでのシェア目的のラーメン屋めぐり」文化にたいして、次のような言葉をセリフとして述べています。
…ラーメンってのは腹がへったからざっと一杯かきこむような… 多少 体に悪かろうがうまけりゃいいっつー… そういうもっとシンプルなもんだろう…
もう、セリフからして、この店主のラーメンはうまそう。
博多のラーメン事情
日本のラーメン多様性の高さは、実に卓越したものがあり、これは驚くべきことです。世界を見渡しても、同じ「ラーメン」カテゴリでここまで多様性が高い、all-in-oneの食べ物ってのは、実はそうそうないのではないでしょうか。少なくとも僕には思いつきません。
僕は、「訪れたことのある都市」を、「そこでラーメンを食ったことがあるかどうか」によって定義しているくらいです。ご当地キティーちゃんもいいが、ご当地ラーメン。これは現地のラーメンに対するパッションだったり、ラーメンの文化における重要性を測る、よい尺度になるとすら思うのです。はい。過言です。
そんななかでも、福岡博多のラーメンは、世界一うまい。4年間住んだ博多への贔屓目なく、これほどまでにラーメンが美味い都市はありません。驚くべきは、その「●●ラーメン」という観点からの多様性は低いこと。ラーメン・イズ・豚骨。それ以外はラーメンにあらず。いや、博多ラーメンが、ラーメンから分化しているとすら感じる。あれは別の食べ物なのだと思います。
さらに驚くべきは、その値段の安さ。この点においては、いくらかのバリエーションがありますが、僕の経験では、アベレージ700円で、替え玉アベレージは100円。安すぎるのかも知れないけど、それだけ繁盛しているのだから、サステナビリティ的には大丈夫そう。 特に、長浜ラーメンは550円。
【改訂版】博多ラーメンよりも超濃厚!?福岡名物“長浜ラーメン”が評判のお店8選 | favy[ファビー]
…外国からこの写真を見るのはすこし、自爆テロに近い。もとい、この長浜ラーメンは、実に中毒性のある美味さなのでです。工事現場のおっさん、学生、サラリーマン、おじいさんおばあさんはもちろん、親子連れ、女の子も足繁く通うラーメンが長浜にはある*1。老若男女が長浜ラーメンで育つ。それが福岡。
飲み会のあとはラーメン。
風邪引いて治ったらラーメン。
他県への土産はラーメン。
コメと一緒にラーメン。
生活がラーメンに満ちているのです。
コスパ
先ほども述べたように、とにかく安いのです。そしてその、病理的美味さを味わえるのです。そんな都市に長らく住むと当然、ラーメンにおけるコストに対してもパフォーマンスに対しても、ハードルがグッと上がるのは致し方ないこと。
一蘭?一風堂?うん、有名なチェーン店は美味しいのですよ。しかし、あれらの店では、1,000円くらい払うわけでしょう。そんだけ払うなら、美味いラーメンが出てこないと困る。だから僕はそうした店にはなかなか足を運べない。
Berkeleyにも一風堂ができました。一同拍手喝采。しかし、15ドル〜20ドル払うのでしょう?ビールとかも飲むなら、30ドルは払うわけです。これはもうパーティーですよ。でも、ラーメン一杯?…そうか〜。
対策
もちろん、福岡に行くのはもっとお金がかかる。だから博多ラーメンのコスパをアメリカから語るのはナンセンスというのは分かります。 しかしそれでも!20ドルも払って一風堂に行くくらいなら、僕は、Tokyo Fish Marketで棒ラーメン(棒状のラーメン)を5ドル(2杯分)で買って、自分でさまざまなスパイスとかアレンジしながら食べたほうがいいよなあと思うのです。
だから困るのが、友達と集まったときにたまになる、「一風堂、行ってみようか」という話。この経験、何度あったことか。しかし僕はこれまで、すべて神回避してきました。
一度は行列がすごかった。二度目はなんと奇跡的に、ちょ〜〜〜〜〜うどBerkeleyが停電になって、一風堂にも入店できなかったとき。最後は、奇跡的な臨時休業。神を信じかねないレベルの神回避。
繰り返すと、僕は「コスパ』という言葉は決して使わない。except for Ramen。