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Life is Beautiful

主に進化生物学の理論のブログです。不定期更新予定。

真・包括適応度理論の「限界」

昨日、Nowak論文を分析するブログをあげたのですが、この私の解釈




について、少しまとめてみました。
上図で、遺伝子型値を
紫=0
緑=1
黒=2
茶=3
と割り当てて、ハミルトン則を出してみましょう。対応表はこんなかんじ。

なお、gとwとの相関が0でないことは自然選択のおこるための必要条件です。それを見てみると、
E[gw]ーE[g]E[w]=0.5>0
となります。つまり、自然選択がおこり、遺伝子頻度が変化するための必要条件が満たされています(そして確かに遺伝子頻度は変化している)。
この表に基づいて計算すると(詳細は彼らの論文とおなじ計算方法なので省略)、
R=-1/4, B=-2/15, C=-7/15.これによって、RB-C=1/2>0となります。相互作用があってもなくてもこの結果は変わらないものという仮定により、「中立的な相互作用が、相手を傷つけ(B<0)自分を癒やす(C<0)という利己的な行動として進化する、と解釈されてしまう」ということになります。
このことから我々が言えるのは、包括適応度理論は破綻したではなくて、この包括適応度理論から導き出されるハミルトン則からでは、自然選択の起こる方向は予測できないということです。包括適応度というのは、(形質値の違いによる選択の強さの項に関する)適応度のテイラー展開の一階微分の項の和でしたから、その符号をチェックするのでは不十分だ、ということです*1。それはつまり、選択が強いために、テイラー展開の一次の項がよい近似になっていないということであり、高次の項を見てやる必要があります。これが真の、包括適応度理論の「限界」とでも言うべきものです。ただしくは、包括適応度理論の予測可能性の限界をこえた具体例だ、でしょう。*2

完璧な理論は存在しませんね。

*1:と書いたものの、勘違いのような気がしてきましたので、後日もう一度分析を加えたい

*2:Laurent Lehmannとメールで議論していて得た結論なのですが、Nowakらは代替案を示していないあたり、姑息ですよね。Price方程式はこれを一発で解決しますけどね。